(オープンイノベーション講座-6)
オープンイノベーション活動にどのように取り組むか? 基礎編


本稿では化学メーカーなどの研究開発型企業がオープンイノベーション活動に取り組む際の一般的な流れを説明する。

自社の状況を分析する

研究開発型企業は中長期的なビジョンを達成するための企業戦略と、それに付随したイノベーション戦略や研究開発戦略を持っている。 イノベーション戦略は企業必要なイノベーションの種類を規定し、意思決定を容易にする。

Jaruzelskiらは漸進的/画期的なイノベーションに対するアプローチの違いと、製品ニーズを特定する際の顧客の役割に基づいて3つの戦略に分類している:
  1. Need Seekers
    既存または潜在的な顧客のニーズに対する深い理解をベースに、いち早く新製品を創出する
     
  2. Market Leaders
    顧客や競合の観察結果をベースに、漸進的なイノベーションを実現する
     
  3. Technology Drivers
    自社の技術力をベースに積極的なR&D投資を行い、漸進的・画期的なイノベーションを実現する
(参照)
Barry Jaruzelski, John Loehr, Richard Holman (2011) The Global Innovation 1000: Why Culture Is Key, strategy+business , 65

上記の報告ではイノベーション戦略と企業戦略・企業文化との整合性が高いほど、イノベーションの収益性が増加すると結論付けられている。

自社の戦略を確認した後に外部から調達すべきリソースについて考察する。例えばNeed Seekersに属する企業の場合、顧客の真のニーズを読み取り新製品を企画した際に、自社の技術では対応できない可能性がある。その時は外部から技術を調達すればよい。

Technology Driversの企業では、顧客のニーズに関する情報を外部に求めたり、また自社が強みを持たない異分野の技術を調達するかもしれない。自社技術をベースに商業化に長けた外部パートナーと提携することも考えられる。

このようにまずは自社の各種戦略や企業文化を確認することを通して、外部から調達もしくは導出するシーズ(アイデア・技術・製品など)を特定する必要がある。

オープンイノベーションの手法を選ぶ

次に対象となるシーズに基づいて、以前の記事で紹介した様々なオープンイノベーションの手法の中から適したものを選び出すことになるオープンイノベーションの手法)。

例えばある技術の導入に対して、オープンイノベーションコンテストとオープンイノベーションコミュニティのどちらが相応しいかを考えてみ両手法とも社内で開発を行うよりも効率的に技術を調達できる可能性がある

社内開発の場合、企業は開発に必要な知識と能力を持った者を見つけ出し、業務として割り当てればよい。しかしながら社内のリソースは限られているため、新しい技術分野などでは難しい

大きな母集団に対して呼びかけを行うオープンイノベーションコンテストとオープンイノベーションコミュニティには相違する点がある。LakhaniHarvard Medical Schoolの計算生物学分野のチャレンジを通して、オープンイノベーションコンテストとオープンイノベーションコミュニティの違いをまとめている:
  • オープンイノベーションコンテスト提案されたアプローチは募集の締め切り後に参加者に開示され
  • オープンイノベーションコミュニティプロセス中も参加者間知識のやり取りがあった
  • オープンイノベーションコンテストでは探索的/実験的なアプローチが多く、多数の異なったタイプの提案が集まった
  • オープンイノベーションコミュニティでは少数のアプローチに収束し、平均値としてはオープンイノベーションコンテストで集まった提案よりも質が高かった
  • オープンイノベーションコミュニティの方が積極的な参加者の数が少なかった
(参照)
Lakhani K R (2016) Managing Communities and Contests to Innovate with Crowd, In Harhoff D, Lakhani K R (eds) Revolutionizing Innovation Users, Communities, and Open Innovation, MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 109-134

れは発散した多数の解決策が欲しい場合はオープンイノベーションコンテスト、収束した少数の質が高い解決策が欲しい場合はオープンイノベーションコミュニティが適していることを示唆している

手法や対象を選択する際には企業文化にも注意する必要がある。例えば学術的な研究重視する企業の場合、アカデミアの研究者を対象とすればよい。実用化に近い技術興味が集中している企業では、中小企業を主な対象としたほうがいかもしれない

自社で行うか仲介業者を活用するかを決める

用いる手法が決まった後はどのように実行するかを検討する自社単独で行うほかにもオープンイノベーション仲介業者を活用できる両者の違いは以下の通りである:
自社で行う場合、トップダウンでイノベーションチームを編成することが一般的である。オープンイノベーション活動を行う際には多様な観点から議論を行うことになるため、R&Dだけでなく知財・法務・広報などの出身者も含めてチームを編成することが望ましい。

多数の仲介業者が異なる手法を異なる価格でサービスとして提供しており、保有するネットワークの規模・分野・対象にも違いがある。そのため比較検討しながら自社にふさわしいパートナーを見つけなければならない。

現時点でオープンイノベーション活動に活発に取り組んでいる企業は、一部を自社単独で実施しながら仲介業者も活用している全面的に仲介業者に頼ると自社内に経験やノウハウが溜まらないため、ある程度は自社で試行錯誤を行うことが重要である。

おわりに

本稿ではオープンイノベーション活動に取り組む際のステップを3つに分けて紹介した。活動を行うことありではなく、自社にとってのオープンイノベーションの位置づけを明らかにする必要がある。

Tom

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