(オープンイノベーション講座-1)
オープンイノベーションの基本事項

本稿ではオープンイノベーションの概要を説明する。

オープンイノベーションの定義

様々なメディアにおいてオープンイノベーションという言葉を見るようになってきた。しかしながらどれだけの人がその意味を意識して使っているのだろうか。言葉は時代と共に移り変わるが、それでも最初の定義を知れば理解が深まる。

オープンイノベーションという言葉を提唱したのは当時Harvard Business Schoolassistant professorの職にあったChesbroughである。2003年の著作において外部と積極的に連携して製品開発を行う動きをオープンイノベーションと名付け複数の企業における事例を紹介している。

本書での定義は以下の通り: 

Open Innovation is a paradigm that assumes that firms can and should use external ideas as well as internal ideas, and internal and external paths to market, as the firms look to advance their technology. Open Innovation combines internal and external ideas into architectures and systems whose requirements are defined by a business model.
(参照) 
Chesbrough H W (2003) Open Innovation: the new imperative for creating and profiting from technology, Harvard Business Review Press, Boston
  
また2006年の著作における定義は以下の通り: 

Open innovation is the use of purposive inflows and outflows of knowledge to accelerate internal innovation, and expand the markets for external use of innovation, respectively. [This paradigm] assumes that firms can and should use external ideas as well as internal ideas, and internal and external paths to market, as they look to advance their technology.
(参照) 
Chesbrough H W (2006) Open Business Models: How to Thrive in the New Innovation Landscape, Harvard Business Review Press, Boston
 
私は「組織の境界線にとらわれず、内部と外部のあらゆるリソースを効率よく組み合わせることでイノベーションの創出を最大化する」考え方と理解している。オープンイノベーションはmethodではなくphilosophyでありmindsetである。つまり単なる一手法ではなく行動を決めるための考え方である。

なぜ今オープンイノベーションなのか?

幅広い業界で企業を取り巻く3つのトレンドが存在している: 
  1. イノベーションの創出が困難になっている
    • 製品の開発難易度の上昇
    • 競争の激化
  2. 有用な外部の知識が増加している
    • 高レベル人材の増加と分散
    • アカデミアの実学志向と特許化推進
  3.  外部の知識の探索が容易になっている
    • ITツールの普及
    • ベンチャーキャピタルや仲介業社の増加 
製造業の場合、製品開発における外部の知識の重要度が過去と比べて上がってきている。その理由としてこれまで先進国の大企業が独占していた知識やノウハウが、新興国や中小企業に分散していることが挙げられる。また異分野の知識が必要な学際的な領域での製品開発が増加していることも要因である

したがって企業が競争力を上げるために、そしてそれが可能であるためにオープンイノベーションが意識されるようになってきた。

なぜオープンイノベーションが必要なのか?

製造業では以下のメリットにより競争力が向上する:
  1. 製品開発のスピードが上がることで売上高と市場シェアが増加する
  2. 製品開発の成功率が上がる
  3. R&Dのコストが削減できる
競合他社が取り組めば、自社としても対抗せざるをない。
 
各々の企業が自らの強みに集中して外部から弱みを補うことで、効率よくイノベーションを実現できる。オープンイノベーション知識の取引である。貿易における商品の取引生産性を向上させることを思い出せば、オープンイノベーションは実践して当然ではないだろうか

オープンイノベーションを取り巻く現状

企業はオープンイノベーション活動の成熟度によって以下の5段階に分けられる 
  1. オープンイノベーションに否定的で取り組む予定がない
  2. オープンイノベーション活動を行う計画があるが現時点では取り組んでいない
  3. オープンイノベーション活動に最近取り組み始めた
  4. オープンイノベーション活動に取り組んで試行錯誤している
  5. オープンイノベーションを本格的にR&D戦略や企業戦略に組み込んでいる 
多くの日本の企業1〜4のいずれかの段階にあるに対して、国外の先進的な企業の中には5の段階にあるものも見られる4から5へ移るためには活動に継続して取り組まねばならず、しばしば困難な過程が待っている

また分野間の違いがある。例えばICT・製薬・一般消費財業界では以前よりオープンイノベーションが普及しており、それほど特別な考え方ではない。一方で化学業界ではいまだ目新しい

さらには企業のみならず政府やNPOの間でもオープンイノベーションが広まる動きを見せている。例えばアメリカの連邦機関はオープンイノベーション活動に積極的である。

オープンイノベーションを越えて 

いずれオープンイノベーションが当たり前になる時代が来る。その時には企業を取り巻く状況は現在と大きく異なっているだろう。オープンイノベーションを統括する専門の組織がなくなり、あらゆる部門が日常的に外部と連携して業務を行うようになる。現在の経済活動の主体である大企業の数が減り、小規模な企業や個人のネットワークがイノベーションの主役となるだろう

本ブログではオープンイノベーションについての情報を紹介することを通して、その将来について考えいきたい

Tom

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